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スラユット政権の課題は、今

1. スラユット 政権の課題は、今

スラユット首相が任命された際に、国王が指摘された課題は次の通りでした。「洪水やその他緊急の問題に対処しなければならない。特に、外国人やタイ国内でもたれる穢れたイメージを正さなければならない」
 
1)洪水
 プミポン国王は昨年12月5日誕生日のお言葉で「洪水は防げるものだ」と指摘をされました。2006年の洪水は、水を管理するものがその義務を怠ったことによる、と明確に指摘をされました。「引き潮時に放水し、満ち潮時に放水を止める」という単純なことができていなかった、というわけです。「洪水防止に責を負う人は、洪水防止が上手に行われている場所へ行ってよく見てください」と指摘されています

2)南部対策
 新政権になっても南部3県で学校の放火、教師や民間人の殺傷は続いています。王族や閣僚の現地への訪問も続いていますが、問題は解決されたわけではありません。1月26-27日、南部3県を訪問したスラユット首相は「住民参加による一致団結と平和的な手段が南部情勢正常化への鍵を握る」と述べています。

3)新憲法制定
 1月25日に憲法起草作業委員会の委員長にプラソン・スンペリ空軍少将が選任されました。タイ愛国党の暫定党首のチャトロンは国会議員の数が500名から300名に削減され、愛国党が影響を受ける、との見方を示しています。上院、下院のあり方も見直されます。1997年憲法が基本になる見込みですが、先の1997年憲法起草者であったブーンスワン氏は次のように述べています。

①国民の選挙権、被選挙権は基本である
②民主主義の原則は守る
③地方自治の原則を崩さない
この3点を維持すれば、後はどのようにも変更ができる。
 今後の予定では、7月までに原案が憲法起草委員会で取りまとめられ、その後、国民立法議会、国民投票につながる予定です。10月に選挙ができるのかどうか今の時点では見えません。

4)政変後のタイのイメージ
 アセアン諸国、アジア太平洋諸国との首脳会議などを通じて外交的にはスラユット政権は、認知をされたと見えますが、タイではクーデターは起こらない、と思われていた印象がなくなりました。
 一般の旅行者の印象はどうでしょうか。例えば、11月から1月末まで、チャンマイで開かれているロイヤル・フローラ(花博)は当初200万人の動員予想が350万人も参加しました。大半は、国内の家族旅行者ですが、海外からの旅行者も増えました。経済効果について、カシコーン経済研究所は、300万人が参加した場合で230億バーツもの効果があると見ていました。チェンマイに来る観光客は例年の4倍もの数にのぼり、ホテルやみやげ物店は賑わっています。(ホテル代も相当上がりましたが。)

2. 投資環境の変化

 国際協力銀行JBICの2006年調査などをみるとタイの投資環境は次のような変化が見えます。

1) タイの優位性は何か:今まで、タイは労働力確保の優位性、政治の安定性が投資環境を見たときに中国などと比べて優れているとされました。ところが、2006年の政変と南部問題、年末の爆弾事件など治安の安定面で懸念を抱かせる要因があります。インドの台頭により、アセアンの市場よりもインドの市場に興味を持つ日系企業が増えました。また、労働コスト面では、ベトナムが注目を集めています。日系企業の関心のある投資先 1位中国、2位インド、3位ベトナム、4位タイ(昨年はタイが3位で4位がベトナムでした)
2) 投資優遇政策:タイ政府投資委員会BOIでは、自動車産業にエコカー構想を導入するなど、投資家を呼び込む政策を打ち出そうとしていますが、新しい大胆な政策を打ち出すには、現在の暫定政権ではなく次の本格政権への移行を待たなければならないと思われます。
3) 金融政策:昨年12月18日に中銀が打ち出した外為規制措置は、投資には影響を与えないと説明されていますが、現実にはバーツ高が止まらない状況です。海外からの投資コストを考えると、1年前の外貨が15%以上も高くなったことは事実でしょう

3. 組み込みソフト人材育成も日本の人材不足から

経済産業省では日本国内の組み込みソフト人材が不足していること、組み込みソフトの8割が海外にアウトソーシングをしていること、中国、インド以外にアウトソーシング先を開拓するニーズからタイ政府(ICT省、科学技術省、工業省、教育省)、家電・自動車・HDD製造など日系企業とAOTS、JETRO、TPAの協力により人材育成事業を進めています。事業は2006年にスタートして、2007年1月から第1期の研修生14名は日本の受け入れ企業で実習が始まります。
 タイではICT省、科学技術省の下で,IT、バイオ、金属など各種研究施設を開設しております。それらの人材が育ち、タイが知識集約産業国家に変身できるかどうか、政府や業界の実行力が問われます。
 自動車・二輪業界でも、トヨタ、ホンダ、ISUZU、ヤマハなどがR&Dの拠点をタイに設置しました。現状の製品の検定、評価から今後は新製品の設計に比重が移る過程だと見られます。
 組み込みソフトの必要性で見ると、DVDでは2002年0.2Mが2005年では1.8Mと9倍、携帯電話で2002年の1Mが、2004年には5Mと5倍、自動車では2000年の1Mが2005年に5Mに5倍ものプログラムの規模が拡大しています。自動車産業における新規の技術革新の9割がエレクトロニクス分野だとも言われますので、組み込みソフト人材の必要性も拡大していきます。

4.  景気見通し、下方修正へ

中銀は、2007年の景気見通しを約0.5%下げ4-5%にしました。
 主な理由は、個人消費と民間投資が昨年同期よりも下がったことです。個人消費は昨年の4-5%から3.5-4.5%に、投資も昨年の8-9%の伸びが6-7%の伸びと見ています。輸出は、昨年の6-9%から7.5-10.5%と上昇と見ています。もっとも、商業省の目標とする12.5%とは見ていません。
 スチャーダ総裁補は「昨年第4四半期から投資が回復するとみていました。ところが、洪水や政府の大型プロジェクトの見通しが不確かなことから、投資家の設備投資は遅れている」と見ています。中銀の経済見通しは、財務省、国家経済社会開発庁NSEDBの見通しと似ています。なお、昨年12月に実施した為替取引規制は、経済成長率を0.79%下支えすると予測されています。

5.  スワンナプーン空港の滑走路に不具合
  開港4か月で、滑走路にひびが入ったというニュースが流れました。このため、補修の期間中、ドンムアン空港を代替で使用すべきだという意見もあります。運輸相は、一部の空港会社は迂回港としてウタパオ空軍基地で燃料補給をするなど対策を取っていることを認め、「この欠陥の責任は誰かが負わなければならない」としました。
 15年前に現空港建設に反対した建築家がいます。建築家スメット博士によると、元ノングハウという沼地に空港を建設するのは反対だと運動をしたが、政府は結局開港に至った。昔から湿地に建てたタイの家屋のように、排水をしっかりした家なら長持ちをする。パイルを打ち込むだけでは問題だと指摘しています。バンナトラッドの高速道路もしっかりと杭を打ち込んでいるが、10数年も経過すると道路の沈下は続いています。スメット博士は、「問題は汚職が原因である。杭は必要。現在ある干拓地の上に新しい滑走路を拡張する予定があるが干拓地は拡張すべきではない。新しい滑走路は、水がその下を通るように橋げたの上に建設すべきである」との意見をもっています。

# by tmobkk | 2007-01-01 18:40 | タイの動き  

お誕生日、国王の言葉 


1. 「高齢者は経験が豊富」 国王のお言葉
 プミポン国王は毎年12月5日の誕生日前夜、拝謁者に対して恒例のお言葉を出されている。この言葉は、その後の政策運営に
大きく運営するため内外で注目をされて、テレビでも放映されている。
「何をおいても、気力は必要だ。先ほど私が立ち上がらなかったのは、気力があるが体力がないからだ」
(6月の即位60周年の記念行事の後、脊髄の手術をされ健康が気遣われたが、誕生日前にも公式行事に顔をだされた)
「この政府は、年を取っていると言われている(笑い)が、実際のところ、年を取るほど、メリット、有利さがある」
「この混乱時に閣僚・首相ポストを引き受けたことは、政治的利益を享受しようとするものではない。
政治にはもうアキアキした。もう話したくない。しかし、洪水のことは話さなくてはならない」(バンコク週報12/11)


2. 新憲法制定への道のり
 9/19の無血クーデターにより1997年の憲法が停止(10月号のタイの動きに紹介)12/17国民会議2000名の中から200名の憲法起
草委員会候補選定。
近く100名の起草委員による新しい憲法案を作成。来年10月を目処。
すべての責任を持つ国家治安評議会(議長はソンテイ将軍)が、以下の指針を表明しているので、この点を中心に議論が
なされる見込み。

1)首相任期は2期まで
2)国会が解散された場合、内閣の役割は終わり、選挙期間中は事務次官が代行する
3)首相は、現在の国会議員200名の署名に代わり100名の反対で問責決議を受ける
4)上院議員は、全員が選挙によって選ばれるべきか
5)国会議員は政党に所属して90日以内は選挙に出ることができない条項の是非(Nation 12/17)


3. タイへの観光客、2007年は1480万人を目標に
 前政権は 2007年の観光客を1500万人の目標にしていたが、現政権は若干の下方修正をした。
タイ観光公社(TAT)は、2006年の実績を1365万人、観光収入を4810億バーツ(約1兆4430億円)と見込んでいる。外国人観光客には
スポーツやショッピング、エコツアーなどを中心に観光誘致キャンペーンを展開する。
TATはバンコク都を始め、プーケット、チャンマイ、コンケンなど各地方で会議を開催し、2007年の観光促進策について協議をしている。
ちなみに、TATの2007年の予算は44億3000万バーツ(約132億円)(週刊タイ経済12/11)


4. エコカープロジェクトの見通し
 12/3のまぐまぐ「From Bangkok」でも紹介したとおり、タイ政府投資委員会BOIはスラユット政権発足後、初の本会議で省エネタイプの
自動車生産に特別投資優遇措置を与えることを方針決定した。タイに集約している自動車各社の1トン・ピックアップについで、
エコカーを戦略車種としてタイが主力生産基地となることを狙ったもの。>ただし、エコカー・プロジェクトには数百億バーツもの投資が
必要で、タイ国内で10万台以上の生産を要求されていることから、輸出だけではなく国内でも相当数の販売が見込まれることが必要。

 このプロジェクトはピックアップの生産だけではいずれ頭打ちになる恐れから打ち出されたものであるが、ピックアップを主力としない
自動車メーカーおよびタイ国内でピックアップのシェアが低いメーカーには興味の高いプロジェクトになる見込み。年内に、各メーカーから
最初の提案を受けて2007年3月までにBOIと協議を重ねることになる。問題は、ピックアップと同様の個別物品税など優遇策を同時に
出されるかどうか、課題は大きい。また、ピックアップ主体の国内の自動車市場の変化を予想する向きもある。(週刊タイ経済)

5. タイの外国人労働者  
 このほどILOとマヒドン大学人口社会研究所が外国人労働についての調査を公表。同調査によるとタイにおける外国人労働は搾取され、
悩ましく、低賃金、過労と無視の状態に置かれている。一方、労働省の不法外国人労働局のナラ局長によると、これは一部の外国人
労働者の問題だと反論。「外国人労働者もタイ人と同じ法律の保護の下にある。昨年、タイで登録された外国人労働者は10万人を超える。
大学の調査では700人しか調査対象になっていない。周辺国に働く外国人はタイ以上にひどい状態である」ILOのメコン地域児童女性問題
プロジェクトのテチス マンガハ・マネジャーは「問題は小さくとも解決することが必要だと」訴えている。Nation 12/17

6 政変後の、上場企業の経営戦略 
カシコーン銀行 
①  経済全体では懸念はないが、金利、バーツ相場、石油価格に注意。
② 商業銀行だけではなく、ノンバンク、債券市場、資本市場など間接金融とも競合
③ 新テクノロジー さまざまなメデアを通じた決済システムの結合
④ 国際基準の導入
⑤ 国民の人口構成の変化と性向の変化に、商業銀行がどう対処するか
PTT(実質的に半民半官の エネルギー会社イのエネルギー関連業界は、世界の石油相場と競争しつつ、コストを下げる努力をしている。

ICC(消費財)
① 従来とは違ったイノベーションが必要
② 経営者は、常に戦略思考が必要
③ 国の環境がどうなろうと事業家は利益が出るかどうか、確認をすること。
④ 事業機会をつかむこと (週刊タイ経済)

7. 中央銀行のバーツ投機抑制策により株式暴落  
 タイ中央銀行は12/18 金融機関に対して、外貨の両替を規制する措置を導入した。 この規制を嫌がった株式相場では12/19の
早朝から売り一色となり、株価は急落した。 通貨当局は、規制は両刃の剣であることを認識して、資本市場に及ぼす影響があると
承知していたと見られる。プリデイヤトーン副首相も、株式市場に及ぼす影響は短期的で、中銀のバーツ投機規制を支持するとコメントを
出した。
12/19から実施された外為規制の内容
1)外貨をバーツに交換する場合は、30%を強制預金とする以下は、除く。2万米ドルもしくは同額の外貨・商品代価、またはサービス代価、
タイ人が海外から回収した投資だと分かる外貨。
2)強制預金の返金・外貨取引日より1年を経過後に無利息で返金する1年未満の場合は預け金の3分の2しか変換できない。
(のこりはペナルテイ)

# by tmobkk | 2006-12-01 18:41 | タイの動き  

スラユット首相APEC首脳会議にて 


1. スラユット首相APEC首脳会議にて 
 11月18日ハノイで開催されたAPEC首脳会議でスラユット首相がタイの現状を説明。
 「タクシン前首相が行った性急な政治改革への対応、蔓延する汚職と政治不安定が長引くことに対するタイ独特の反応があった」
とクーデターの正当性を説明。
タイ社会は、今までにないほど対立化した。貧しいものは借金でさらに苦しむようになった。首相は、純粋な民主主義改革、
弱い民主主義体制の強化、チェック機能の回復、透明性の強化、よい統治が
(タクシン前首相の)リップサービスに換わることになる、と説明。

暫定政権は、今後12ヶ月で政治改革の強化、国家統一の復旧、所得不平等の是正、法治体制の強化など4つの主要な構造改革を
行うと説明した。特に、政治改革は優先課題であると説明し、1年の期限を設けて新憲法の制定と新しい選挙の実施をすると
説明した。

「政権は、和解にむけた歩みを始めた。前政権がタイ深南部のイスラム教徒を抑圧してきたことに対して私は最近許しを請うて
きた」とスラユット首相は説明した。
タクバイ事件の抗議者に対する訴えを取り下げたこと、タクシン前政権が2001年半ばに解散した南部国境地域行政センターSBPAC
を復活したことを説明した。

「現政権は、貧しいものに対して教育・健康およびより良い生活の機会を提供する。
前政権が行った施策で効果があるかどうか検証し、より透明で効果の高いものは継続する」

「GDPは重要だが、これは国民の消費や環境の質を示すものではない。成長の質は成功を図ることと同様に重要である」
と述べた。

「今年は、50万台の車を世界に輸出している。」とタイは世界でももっとも魅力的な投資対象国であると説明した。

「我々は、国際社会の一員であることを理解している。従い、投資政策を変えることは無い。外国投資は、新政権になっても
保護される」と述べた。NATION11/20

2. タイバーツ高の背景(8年ぶりの高さ)
 今年前半からタイバーツは上昇を続けてきた。4月に6年ぶりの高値を記録し、その後も上昇をして11月17日対米ドル・バーツ
相場は、一時1米ドル=36.46バーツまでになった。
8年ぶりの高水準である。9月19日の無血クーデターによってタイバーツが下がるのかと懸念もされたが、逆に高くなった。
これはタイ国内の事情だけでは説明ができない。11月17日バンコクで行われた日経新聞セミナーで、経済評論家の田中直樹氏は
「今や経済は一国だけのモデルでは説明できない時代になった。バナーキ連邦準備委員会FED議長ですら、ドル紙幣の半分が米国
以外の世界で使われていることから、インフレターゲットなど米国経済単独で金融、為替操作ができないことを認めている」
と説明。

注目すべきニュースは、3月上旬UAE(アラブ首長国連邦)・ドバイの国営港湾会社DPワールドによる同業の英最大手P&O
(ペニンシュラ・アンド・オリエンタル・ス チーム・ナビゲーション)の買収により、中東系企業が米国の港湾管理業務を
行うことに対し、国家安全保障上の観点から米議会が難色を示したため、最後にDPが米国企業に転売したこと。

これによって、中東のあふれた資金が、米国に投資する流れが変わりインド、東南アジア、欧州に向かいそれぞれの通貨を
押し上げたことになる。

3. タイバーツ高の影響  
 バーツ高によってコメやエビなどの主要産品の輸出が鈍化させることが懸念された。11月16日食品、衣料品、繊維などの
輸出企業10団体の代表が、スラユット首相・プリディヤトーン財務相・タリサ中銀総裁に対し、バーツ高を抑制するよう、
要請書を提出した。
バーツ高を抑制するための、タイ中銀の市場介入が、ドル下値バーツ上値を支えているが、海外勢によるドル買い戻し
(バーツ売戻し)が活発。非居住者のバーツ取引を緩和するなど中銀の対応はあるが、タイ単独では世界の流れを変えるのは
至らないのが現状。バンコックポスト11/18

4. 自動車業界
 自動車の動きをみると当初予想した年間120万台達成は微妙な段階になっている。トヨタ自動車の、ある1次下請け企業に
取材にうかがうと当初50万台と予想していたが、47.5万台に修正し、実際は46万台程度に収まるのではないか。
これに来年度は第3工場が完成することか7.4万台の生産増加と思われるが、これは現在のSAMRON工場の移管分と見てもよい。
ホンダは好調である。これは昨年年初のクレームによるイメージダウンによって年間を通じて低迷したが、今年に入ってから
JAZZなど健闘をしている。

# by tmobkk | 2006-11-01 18:43 | タイの動き  

スラユット新政権の顔ぶれ

1. スラユット新政権の顔ぶれ
 プミポン国王は8日夜、スラユット首相が奏上した閣僚名簿を承認された。国王に対する閣僚の宣誓式は9日夕刻に行われ、
 10日から新内閣の業務が始動することになる。

 国王は、スラユット内閣の認証式に当たり次のように訓示した。「内閣は洪水やその他緊急の問題に対処しなければ
 ならない。特に、外国人やタイ国内でもたれる穢れたイメージを正さなければならない」
 スラユット首相は組閣にあたり、ポストを巡る水面下の動きが激しかったことを認めた上で、「外部からの圧力をはねのけ、
 能力、誠実さ、自己犠牲の精神を考慮し、閣僚を選んだ」と発表した。
 また、直前まで難航していた内相人事は、イスラム過激派によるテロが沈静化しない最南部対策を考慮し、イスラム教徒の
 アリー元内務事務次官が起用された。同ポストを巡っては、軍関係者が根回しをしていたが、スラユット首相はこれを押し
 切ったようだ。

 その他の閣僚ポストは、タクシン前首相と対立した官僚、学者の起用が目立つ。
 ◆第1次スラユット内閣閣僚(2006年10月8日任命)
首相兼財務相プリディヤトン・テワクン      
首相府相ティパワディ・メクサワン
国防相ブンロート・ソムタット           
副外相サワニット・コンシリ
社会開発・人権保護相パイブン・ワタナシリタム
副農業相ルンルアン・イサランクン
副運輸相サンサルン・ウォンサウム
情報通信技術相シティチャイ・ポカイヤウドム
エネルギー相ピヤサワット・アムラナン
副内相バンヤット・チャンセナ
労働相アパイ・チャントンチュンカ
科学技術相ヨンユット・ユットウォン
保健相モンコン・ナ・ソンクラ
副首相兼工業相コーシット・パンピヤムラット
首相府相 ティラパット・セリランサン
外相ニット・ピブンソンクラム
観光スポーツ相スウィット・ヨードマニ
農業相ティラ・スタブット
運輸相ティラ・ハオチャルン
天然資源・環境相カセム・サニタウォン・ナ・アユタヤ
商業相クルククライ・チラペート
内相アリ・ウォンアラヤ(イスラム教徒)
法相チャンチャイ・リキットチットタ
文化相カイシ・シアルン
教育相 ウィチット・シサアン副工業相ピヤブット・チョンウィチャン
2. 新政権、法律改正か
 商業省国内取引局は大規模小売業者が全国展開することから何らかの規制をする法律原案が新内閣に提出する見込み。
 同局は本日法律案を新任のクリクライ商業大臣に提出して来週に承認を得る見込み。
 商業大臣は、本日10月12日に小売業者および卸売業者と懇談する予定。
 また、タイ小売業協会は、10月14日に法案について協議を予定している。
 商業省の高官によると、既に取引局では小売業法はできているとのこと。
 同法案は2002年に原案が作成されたが、前内閣や国会が耳を傾けなかった。
 法案は、製造業者および供給者が大規模小売業者からの脅しを受けないように8つの規制が含まれる。
1) 不当廉価販売(ダンピング)
2) 取引開始料
3) 不公正取引契約
4) 供給者や小売業者が強制的または特別価格で購入すること
5) 供給者の従業員を強制的に働かせること
6) 製造業者や小売業者が自社ブランドを強制的に販売促進すること
7) オーダーメードで製造した製品の全部または一部の受け取り拒否8) その他、不公正な取引

 しかしながら、政府高官はこの法律によって小売業の発展を阻害する恐れもあると認めている。
 従い、高官はこの法律によって零細小売業だけではなく消費者や他国籍投資家など社会の各方面に影響を与えることから、
 法案にする前に公聴会を開くことを政府に進言しているとのこと。 NATION 10/12

3. 暫定憲法の概要

 ―暫定憲法から新憲法制定への流れ
1) タイ暫定憲法の概要
・タイは立憲君主制をとる
・国家治安評議会などが各界、地域から「国民立法議会」(国会に相当)議員選出。
・「国民会議」議員も選出。
・治安評議会議長は、暫定首相や閣僚の任命、罷免を国王に奏上する権利を持つ。
・司法の独立を保証。
・恒久憲法は1997年憲法と異なる条項を持つ場合、治安評議会議長や立法議会に説明。
・治安評議会議長、国民立法議会議員、憲法起草にかかわったものは2年間、上下両院議員へ出馬禁止。
・国家運営の問題に関して治安評議会が内閣に共同会議を呼びかける権限を持つ。

4. 政治スケジュール
スラユット新政権の顔ぶれ_c0167063_18511247.jpg

# by tmobkk | 2006-10-01 18:44 | タイの動き  

タクシン支持と、反対派


1. タクシン支持と、反対派
  1)8/26現在のタイの政治状況は、
  ①国会(下院)が解散されたまま
  ②上院議員選挙は、4月に終了したが最終の構成が発表されていない
  ③内閣は、暫定内閣で、次の政権が決まるまで大きな決定が出来ない
  ④国会がないため、来年度の予算が決まらないまま新年度に入るので、暫定予算となる 
  ⑤軍隊は、現状の動きを追認している(クーデターはない)
  ⑥国王も、現状に口出しをされていない、といった状況。
  2)今後の政治スケジュール。
  9月までに選挙委員5名が決まれば、10月15日の選挙について何らかの動きが見える。
  ただし8/24とされていた下院議員総選挙の公示日がずれたことから10/15が遅れるかもしれない。
  また、この情報を容認するとの姿勢をタクシン首相サイドからも出ている。

  3)8月下旬からタクシン支持者と反対派が集団行動をしている中で、衝突した事例もいくつか紹介をされている。
  チャンマイ、バンコク市内など。WTC前でタクシン支持者が反対派に殴りかかる写真では、いずれもが手足に
  白いハンドリストか白い靴や靴下など共通のしるしがついていることを紹介している。作為的ではないか、との疑問。

  5)首相が設立したSHIN CORPの株式をシンガポールのテマサクホールディングに仲介したクラーブゲオの株主構成に
  関して、外国人事業法に違反しているのではないか、との商務省が実施する調査は、まだ調査が不足するとして公表が
  延期されている。
  会計検査院からも、タクシン首相一族の無税売却に対して国税当局に対して終始無視したのは時の政権から何らかの
  指示を受けたか、公務怠慢ではないか、との指摘もある。

2. タイへの投資、予想よりも落ち込む
   8/24ソムキット副首相はタイ政府投資委員会が、今年年初に予想した7000億バーツもの投資をと予想をしたが、
  多くても4000-5000億バーツ程度に終わるのではないか、と認識を示している。特に、政治の不安定要素が投資家や
  消費者の心理に悪影響を及ぼしている。
  確かに、JETRO投資相談所に来る日系企業からの多くの質問が「タイの政治はどうなるのでしょうか?」とのこと。
  サテイットBOI長官は、BOI40周年記念セミナー(8/24)で新しい目標を5000億バーツに引き下げても投資家を呼び込むと
  言明。バンコク日本人商工会議所の坂野会頭から、政治状況が改善されないと外国投資がタイ周辺国、中でも
  ベトナムに向かいかもしれないと示唆を示した。
  タイ工業連盟のサンテイ会長は、政府が高金利、高い石油価格、高い資本価格を是正しなければならない、またベトナムが
  輸出市場でタイに追いつかないためにも政治の安定が必要だと主張。ベトナムの魅力に関しては、別途TMO視察報告を
  参照。

3. 投資環境、タイとベトナム
8/6-12TMOとしてベトナムの投資環境調査。独自判断によると、タイとベトナムと比較すると次の通り。

投資環境、タイとベトナム

タイ

項目

ベトナム

愛国党が与党

 

共産党一党独裁

2006.2~国会解散で

政治情勢

新しい首相、書記長、

今後の動き見えず

 

大統領のバランス

電力・水・道路は整備

 

電力・水・道路の整備中

労働力、コスト上昇

インフラ

30歳以下の若い労働力

技術者不足、転職

 

中間管理者不足、

 

 

転職率は北部では低い

国内市場の発達

 

国内市場は未成熟

自動車は輸出基地に

市場

自動車はアジアの拠点

輸出中心

かなり整備されてきた

投資関連法制

整備中

法治国家へ

透明性

人治から法治国家へ

政策の安定

税制

急な政策変更

6200万人、若年層の減少

労働供給

8200万人、30歳以下の若年層人口の60%

教育・文科系中心

労働の質

国家による教育

企業要望>供給不足

技術者の供給

現在、優秀な人が採用可

国内調達率が高まる

部品産業の発展

まだ、輸入に頼る

Best3

有望投資国

Best4

(TMOの独自調査)







4. タイ南部の治安情勢いまだ収まらず
  新聞や日本大使館の「安全情報」によるとタイ最南部(ヤラー、ナラテイワート、パタニーの3県)ではバイクを使用した
  銃撃事件が後を立ちません。背景は不明ですが、地元新聞情報によると新興分離主義組織のRKKと報じています。
  また、安全保障関連当局の情報当局筋は8/28、非公然分離主義組織の統轄団体と目されるブゥーサートゥーがヤラー県内の
  若者約20人を雇い同県内及びパタニー県内で自動車爆弾やバイク爆弾、携帯電話を使用した遠隔起爆式の爆弾等による
  破壊行動を計画していると警告をしています。(タイの地元新聞を読む)
  8/31に南部ヤラー県の金融機関20が同時に爆破
   南部の爆破事件が続いている。8/31に南部ヤラー県の金融機関20が同時に爆破され、1名が死亡、21人が怪我をした。
   9/2国軍最高司令官のSonthi将軍は、「依然、われわれは本当の破壊活動のトップがどこかわからない。
  組織のトップと話さない限り、平和や和解を取り戻すことは出来ない」と初めて対話を呼びかけた。

  破壊活動の背景か?
  Pattani United Liberation Organization(PURO)、Barisan Revolusi Nasional Melayu Pattani(BRN)、
  Gerakan Mujahideen Islam Pattani(GMIP)と呼ばれる組織は同じ傘の下にあるといわれるが、依然破壊活動の犯人か
  どうか、またその背景にあるかどうか、は不明。
 タイの休日
  9月、10月は休日はありません。

  (注)携帯電話、局番に8を追加。
  9月から、タイの携帯電話が変わります。今まであった携帯電話の、09,01,05の0の後に8が入ります。
  例えば、09-894-0873は089-894-0873になります。
  従来の番号でも11月末まで使えますが、12月以降は使えません。

# by tmobkk | 2006-09-01 18:57 | タイの動き