1. プリデイヤトーン副首相辞任とチャロンポップ蔵相
スラユット政権で経済政策を担当したプリデイアトーン副首相・財務相が2月28日辞任。その理由としては、同氏の経済政策を
批判し続けてきた経済紙と一部の閣僚、前政権で副首相、財務相を努めたソムキット氏を「充足経済」普及の特使として
任命されたことに不快感を示していたこと。プリデイアヤトーン副首相の承認で実施した、資本規制や外国人事業法の見直し
など、株価の低迷を招き、経済運営については各方面から批判があったことも背景にある。そのようなこともあって、スラユット
政権の人気度も低下したことから、大幅な内閣改造をするとの意見もあったが、新しく蔵相にタイ開発経済研究所の
チャロンポップ所長を任命、パイブーン社会福祉省大臣を社会担当の副首相に任命、社会福祉省と保健省にそれぞれ
副大臣を置いたこと、など小幅な改造に終わった。
チャロンポップ蔵相は、ケンブリッジ大学経済学博士、UCLA講師、世銀エコノミストを経て、タイ開発経済研究所長に就任。
タクシン前首相の経済政策、昨年12月に実施された資本規制にも批判をしてきた。就任後の初会見でも、外国資本投資に
ついて考慮をすべきだとの発言もある。
2. 1-2月の自動車国内販売、トヨタ第3工場オープン
タイトヨタが集計した2月の国内自動車販売は前年同期比18.4%マイナスの43,606台になった。1-2月合計でも19.5%マイナス
と76,557台になった。特に商用車の販売の落ち込みが大きく、1-2月の販売台数は22.9%マイナスの59,523台に終わった。
各社別の動きを見ると、マツダ単独では2694台、前年比131%の販売増であるが、日野自動車1300台、95.9%、ホンダ9465台、
95.1%、トヨタ34388台、87.3%、日産4763台、80.7%、いすず19572台、65.5%、三菱3746台、66.1%と各社とも前年比減であった。
自動車部会の見方によると、2007年の業界を取り巻く環境は、プラス要因として各社の新型車導入マイナス要因は治安の
悪化、燃料価格の高騰、政情不安など昨年と大きく変わることはない。
そのような環境にあってトヨタ自動車は3月13日、東部チャチュンサオ県のバンポー工場で開所式を行った。世界戦略車(IMV)
の1トンピックアップトラックを生産。年産能力は10万台、投資額は約150億バーツ。国内工場は3カ所目となり、合計年産能力は
55万台に拡大する。
3. 建設現場での労働者不足、外国人労働者で対応
昨年から自動車部品業界、電機業界の増産と新工場の増設、都心でのマンション開発が続き、現場の労働者不足が続いて
いる。このため、ある解決法として外国人労働者の導入で対応しているのが現状。既に、タイ政府労働省は、ラオス政府、
カンボジア政府と協定を結び、指定した人材紹介会社経由ならば各国の労働者がタイ国内でワーカーとして働くことを認めて
いる。しかし、タイ人労働者の賃金を引き下げることの無い様に、最低賃金は守ることが原則。これでも不足することから近く
ミャンマー政府とも協定を結びミャンマー人を正規に導入する動きもでている。
一方、タイ人の労働者は汚い、きつい、厳しい現場作業を厭うことから、オフィスワーカーや頭脳労働者としてIT産業を志向する
動きもある。日本と同様に、少子高齢化が急速に進むことから、将来のタイ産業界を担うのは周辺国の労働者である、という
時代が来るかもしれない。
4. 外国人事業法、改正の動き、その後
1月9日閣議で了承された外国人事業法FBA改正案への各国大使館、商工会議所から多くの働きかけがある。
まず、改正の骨子を説明すると以下の通り。
① 外国人が過半の議決権を握る企業を外国人企業に規定
② 外国人企業の定款変更で、外国人企業扱いになる既存企業は当局に届ければ、事業の継続を認める。
③ 規制業種リスト1.2は2年以内に外国人の議決権を是正、規制業種リスト3は是正不要
④ 合弁偽装など違法企業は90日以内に届けて、1年以内に是正
⑤ 法令違反の罰則を強化
⑥ 規制業種リスト3を部分見直し
これまでの流れは、1月9日に閣議決定されたことから、外国人商工会議所、ピーターファーレン会長は立法化半年延期を要請。
しかし、国民立法議会では、審議を開始した。
2月9日に在バンコク、外国大使館意見書提出を提出して,FBA改正には大きな問題があると指摘している。理由としては、
次の通り。
① FBAはWTO違反
② 外資は、資本形態に変更をするなどして影響が出ると補償を要求
③ タイ政府の一部も、この改正案はWTO(GATT)ルールに違反することは承知している
日系社会での影響を計るため実施された調査(2007年2月回収269社)によると、次の通り。
回答企業の内訳は製造業52%、非製造業44%、その他駐在員事務所など。
BOI恩典取得の企業は47%あり、BOI恩典以外の事業を行っているのが18%の48社。ノミニー問題では13%の35社は
恐れがあるとしている。FBA規制対象事業を実施しているのは48%ある。また今まで規制外であった、資本金1億バーツ以上
で小売、卸売業を営むのは52社あった。
その後、政府と国民立法議会で原案の修正がなされようとしているが、「外国人」の認定について個別審査になる可能性も
でてきた。この問題は、次の日タイFTA協定とも関係するため、目が離せない。
5. スラユット首相、日タイFTA調印に日本へ
日本政府とタイ政府が交渉をしてきた経済連携協定は、いよいよ締結への日程が大つめの段階になった。
2月20日開催の閣議で調印の方針を決定した。ただし、有害廃棄物とバイオ特許に関してタイ国内に懸念する声があるため
外務省にこの2点について日本側と協議することが指示された。これを受けて、日本側の交渉団長を務めたピサン外務省
副次官は2月25日から2週間日本を訪問して日本側と協議を重ねた。ピサン副次官は、日本に出発前は最善の努力をするが、
今日提案を修正するのは容易ではないとした。同次官は3月7日「経済連携締結に向けた懸念は解消された」と発言した。
日本から有害廃棄物とバイオ特許に関してタイの法律を優先する」との言質をとった,と説明。産業省の幹部は、協定に
この問題に関する覚書を1ページ追加するとした。
これによって4月の訪日を予定しているスラユット首相は安部晋三首相と調印式に臨むことになる。
協定の主な内容は、貿易に関すること、人の移動に関すること、日本のタイ政府への協力事項が明示される。
タイ側が期待するのは、農産物の輸入拡大、タイ料理人、タイダンス、音楽、ムエタイの文化指導員の入国、就労が可能に
なることなど。介護福祉士に関しては、協定発行後-2年以内に結論を出す予定。
日本が期待するのは、物の貿易の自由化。自動車、自動車部品、鉄鋼製品は引き下げまたは無税化への流れ。
投資、サービスの分野では、タイで生産された商品を製造業関連のグループ会社が行う卸、小売業は日本側資本が75%まで
認められる。 タイおよび日本で生産された商品の修理、メンテナンスを製造業および同一グループで扱う場合は日本資本が
60%まで認められる。物流業では51%、広告サービス業は50%まで日本資本が認められるなど、現在検討されている
外国人事業法の規制強化を、経済連携では緩和できる効果がある