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暫定憲法起草

9/19夜、ソンテイ陸軍総司令官をリーダーとする「国王を元首とする民主主義制度における統治改革団」
(いままで政治改革評議会としていたものを変更。略称を改革団とする)がクーデターを決行。午後11時過ぎ
に、全権を掌握した。改革団は、直ちに国王陛下に拝謁し、政権掌握を報告、クーデターは成立した。
5年半にわたるタクシン政権は終わりを告げた。
今回は、クーデターが起こるまでの、経緯と現状、および経済に及ぼす影響について報告をする。

1. 計画は数ヶ月前から

第3地区陸軍本部のソプラン・ガラヤーンミット中将は9/22、クーデターの計画を7-8ヶ月前からやっていた
ことを明らかにした。当時は、クーデターを計画しているとうわさをされることに対して、タクシン暫定首相
に取り入って、昇格をねらっている士官学校第10期卒業組の2-3人が意図的に流したデマだと指摘して、
クーデターのうわさを否定していました。
その後、2-3ヶ月前からマスコミなどを通じて、政治家に向けたシグナルを送り続けたが、政治情勢は
正常化に向かわず、むしろ最悪の方向に向かいつつあったために敢えて国益のためにクーデターを
引き起こした。
確かにクーデターに出動したのは、ソンテイ司令官の出身母体であるロッブリの特殊戦闘部隊と、第一軍区司
令官下の第一歩兵師団(近衛師団)、北部の第3軍管区、東北部の第2軍管区でもあり、事前に練られた計画に
従った行動であった。
9月末実施する予定の軍人事異動、9/2民衆のための民衆連合による反タクシン政治集会、外遊中の前タクシン
首相が帰国する直前と言うタイミングで、軍内部の首相支持派の機先を制した午後9時に出動し、市内中心部
を制圧、各テレビ局も抑えた。
タクシン首相と同期であった将校を中心とする首相支持派は、ソンテイ大将をトップとする国王忠誠派の
動きを警戒していたが、圧倒的な兵力動員に屈した。

2.今後の民主化への流れと現在のタイ政情

まず、軍事政権から民政への移管の過程は、次の通り。

 2006.9末 暫定憲法、成立
 首班指名
 2007.10初め 民間人による政府、国民会議民主改革評議会(CDRM)は国家治安評議会(CNC)に名称変更
 2007.10 2,000名に上る国民フォーラム会議、憲法起草議会議員200名選定
 2006.10-2007.3 憲法草案
 2007.4 CNC憲法の公聴会実施
 2007.4-5 憲法草案の国民投票
 仮に、国民投票で否決された場合 CNCと内閣が旧憲法を改正して新憲法とすることができる。
では、現状はどうなっているのか。
統治、承認機関 民主改革評議会(CDRM)国王の承認の下、すべての政府、国会に代わる機能を
掌握している。
政府機関 各省の事務次官が、大臣の職務を代行
予算 当初総選挙、国会召集、首班指名の流れからすると、来年3月になると見られた予算は10月早々にも決定される見込み。
従来の政策 30バーツ医療、村落基金など庶民向けの政策は継続
大型プロジェクト 従来どおり進行。
地方選挙 選挙委員会の機能は、現在地方選挙の運営のみ。
裁判所 憲法裁判所が機能停止された以外は、すべて従来どおり。
政党活動 中止
交通、インフラ 通常通り
新空港 9/28開港(予定通り) 兵士3,000名の応援も。
銀行・証券 中央銀行、証券取引所など通常通り
景気、先行き不透明 民間の経済活動は従来どおりであるが、海外からの投資は低迷。オイル価格が
安定し、1バーレルあたり$5下がることにより、タイのGDPは0.45%引き上げる効果がある。
前政権関係者の動静 
  タクシン前首相も、民主改革評議会に健やかな選挙を申し入れた模様であるが、自らはロンドンにいて
  当分帰国しない。なお、夫人と子供たちはタイにとどまる。
  先のタクシン前政権関係者の中で、チャチャイ前副首相、プロミン前秘書長、ネーウイン前首相府大臣、
  ヨンユット前天然資源省大臣は民主改革評議会(CDRM)に拘束されている。また、9/24に帰国した
  スダラット愛国党副党首も愛国党の党員は政治活動を停止すると説明。

3.クーデターの意味と内外の評価
タイでは、1932年の民衆革命から17回クーデターを経験した。現国王陛下統治60年間にクーデター―憲法
廃止―新憲法制定―国会・内閣発足―政党政治―腐敗―クーデターという流れがたびたび繰り返されてきた。
国際社会では、クーデターは民主主義を踏みにじるものだと批判をされているが、タイでは政治上の解決法の
ひとつとして機能をしてきた。
海外では、クーデターは流血があり、悲惨なイメージがあるが、タイでは今回も無血クーデターで、
それまでの政治的な対立は収まった。(9/25週刊タイ経済)

1)世論調査
9/22のクーデター直後に世論調査会社Swan Dusit Pollが行った意識調査では、次の結果が出た。
バンコク都民 875人 クーデター賛成81.60% 反対18.4.%
地方在住 1144人 賛成83.98% 反対 13.64%
賛成の理由は、これまで続いていた政情不安が安定すること、経済が回復することをあげている。
反対者の理由は、対外的なイメージ、信用が損なわれること、総選挙が遅れること、経済に悪影響が
出ることなど。
9/24にABA ポールの調査でも82.7%がこれで政情が安定するとして賛成、中でも66.5%が経済再生に向かうと
している。また、別途アサンプション大学の調査でも8割近いタイ人がクーデターに賛成だとしている。
(タイの地元新聞を読む)

2)世界からはどう見られているか
民主改革評議会は、クーデター翌日には在タイの各国の大使、マスコミを招いて、政変の意図、
早急に軍事政権から文民政権への委譲することをなど説明した。
そのこともあり、9/22のバンコクの証券市場では心配された株価は一時4%近く下落したが、値下げ制限が
発動されるまでにいたらず最終は1.4%の低下で終わった。前首相の不正追及が本格化することが懸念されて
関連会社の売りがでた。前首相一族が所有する通信持ち株会社シンコーポレーション6.45%、
通信衛星会社シン・サテライト15%、関連の不動産SCアセット22%、建設会社は下がった主な要因である。
週明けの9/25にはそれぞれ値を戻し、政治改革評議会が来年度予算を早く決定するとの情報から、
建設関係も値を戻している。(ロイター通信9/22 9/26)
① 観光産業 今回のクーデターで、タイにくるツアーの多くがキャンセルされた。また、今後のタイへの安全神話が大きく崩れる可能性がある。
② 直接投資 「世界から投資を考えるとビジネスの信頼性を失うと、経済は不況になり資本の逃避はタイバーツの価値を下げる。クーデターは、観光だけではなく直接投資にも連鎖を与える。」モルガン・スタンレイ投資銀行のアナリスト
③ タイの悲哀は、ベトナムなどより政治的に安定した国へ投資の方向を向かせるようになることである。

 欧米社会からは、軍事クーデターによる政権交代を厳しく見られている。
ところが、クレイ・スタンレイ社のGreg Stanekは面白い見方をする。彼のファンドの運営方針はタイの
ように問題のある市場へのポートフォリオは5%である。「これからは前向きに考えたい。
民主化への過程は下支えとなり、希望を持っている」9/26Nation

by tmobkk | 2006-09-01 18:52 | タイの動き  

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