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ASEAN諸国の中でタイの優位性が維持できるのか

ASEAN諸国の中でタイの優位性が維持できるのか
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(写真は、BANGKOK POST紙1.1号に掲載された国王の賀状)

TMOタイの動き2012年1月
目次
1.タイ洪水による影響と信頼回復への課題
2.インラック政権、誕生とその後の影響
3.タイと周辺国、資源をめぐる各国の狙い
4.ベトナム、インドネシアとの関係はどうなるか
5.タイの最低賃金、40%引き上げの対応

あけましておめでとうございます。

今月号は、短期的な課題だけではなく、長期の課題も取り上げて、報告をします。
1.タイ洪水による影響と信頼回復への課題
2011年は60年ぶりの降水量と、タイ中北部にあるシリキットダム、プミポンダムの治水管理機能が働かず、また、政府の注意喚起が遅かったこともあって、アユタヤ、パトムタニ、バンコク周辺の洪水で日系企業だけでも800社前後の影響を受けました。
タイ政府の信頼回復にかける課題は、日本政府や世界の主要国から、治水管理のノウハウと助言を受けて、インフラを整備、補強し、タイ投資への信頼を回復すると言うものです。
しかし、災害時のリスク管理は、中央政府や地方政府に任せるだけではなく、自社としても最善のリスク対策、リスク分散を考える必要があります。
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2.インラック政権、誕生とその後の影響
政治経験がまったく無いインラック女史が首相に就任したためか、上記の災害対策本部長は法務大臣が任命されたように、国論を2分する課題は、インラック首相の責任が及ばないようにプアタイ政権として考えている節があります。洪水対策の無責任さや、ミャンマーとの外交も実兄のタクシン前首相が地ならしをしてそのうえをインラック首相が面談する、と野党から批判をされています。初めての自家用車購入の税金還付、初めての持ち家政策の所得控除など庶民よりの政策を取っていると言われていますが、2012年は憲法改正、5年間の政治活動を禁止された愛国党元幹部の復帰など、プアタイ政権の内外で政治運営のあり方が問われます。





3.タイと周辺国、エネルギー資源をめぐる各国の狙い
タイのエネルギー政策をみると、周辺国との微妙なバランスが見えます。
まず、天然ガスは、ミャンマーとマレーシアとの関係が重要です。
79%が国際生産といわれますが、大半はマレーシアとの共同開発のガス田からであり、21%の輸入の大半がミャンマーからです。水力発電の大半が、ラオスからの輸入だと考えると、タイが周辺国との外交は、まず自国のエネルギー政策を左右するといえます。食糧は確かにタイから輸出するほどですが、自前のエネルギー開発も重要な政策だと思われます。
(参考:エネルギー政策局、タイのエネルギー統計2010)

4.ベトナム、インドネシアとタイとの関係はどうなるか
昨年9月にベトナム中部に出張をした。現地に進出する企業を国別に見ると台湾系がおおくあり、ついで韓国が続く。日本からのODAもあるが、フランスからの援助もある。発電関係者に聞くと、ラオスの発電はタイが最大の買い手であるが、第2番目はベトナムである。ベトナムとタイは、国境を接していないが、カンボジアやラオスに行くと、中国製はもちろんだが両国の製品が市場にあふれている。
2011年12月にインドネシア、ジャカルタを訪問。現地の投資委員会を訪問した。その後、ジャカルタの機械展も視察した。2400社の出展で、4日間の開催期間中に23371名が訪問したといわれる。中国、ドイツ、日本、台湾、韓国、タイからの出展が多くあった。
2015年にASEANに共同市場ができるが、各国の諸事情を踏まえたうえで、議論を組み立てる必要があるのである。今までASEANではタイの優位性がぬきんでていたが、両国を訪れると、その格差が縮小している、と思えるのである。
2012年は、両国の追い上げにタイが何で優位性を保とうとしているのか、注目したい。

5.タイの最低賃金、40%引き上げの対応
12月19日にCRJA主催の労務セミナーで、タイ政府労働省の事務次官の講演を聴くことができた。2012年1月実施の予定を、洪水の影響もあり、4月に引き上げ実施になった。
すでに、最低賃金を300THB以上になっている企業でも、労働組合が強い会社は、社外の賃金引き上げに併せて、自社の賃金を引き上げるべきだとの要望を出している。
タイの賃金が上がれば、ミャンマーや、カンボジアなど、周辺国から流入する労働者の数も増える恐れがある。自動車業界を始め、水産業など国内の労働力不足と言う状況では、周辺国からの労働者の移動は避けられないのである。もちろん、国内でも賃金上昇をカバー出来る生産性の向上は絶えず課題となる。
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by tmobkk | 2012-01-02 15:18 | タイの動き | Comments(0)  

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