世界同時不況とタイ

11月号
目次
1.世界同時不況とタイ
 1)タイ経済
 2)国内建て直しの鍵
 3)国内消費は低迷
2.タクシン前首相の影
3.日系企業にも雇用調整の動き


(1)世界同時不況とタイ
1.タイ経済は、貿易と観光によるところが大きく、国内経済の占める割合が低い。
このため、多くの製造業では国内生産だけでは無く、海外市場の動きに大きく左右される。昨年秋から米国発のサブプライム問題に端を発した不況は、G8での不況対策の動き、APECのアジア太平洋諸国の共同歩調にもかかわらず、世界同時不況に向っているようにも見える。タリサ中銀総裁は、タイの銀行は健全経営を維持している、と言明をしているが、貸し出し需要には応じようとはせず、手元資金確保のため預金の引き下げを行うなど、中銀の短期貸し出しには余り頼らない姿勢を維持している。  

これに輪をかけているのが、政治不安である。2008年のASEAN議長国であるタイは首脳会議をバンコクで開催することをあきらめチェンマイにて会議を開催することを決めたように、首相府を占拠するPADとの対話、協調路線が解決しない。
そのため、旅行シーズンに入ったにもかかわらず、海外からの観光客の足は伸びない。11/10-15にベトナムに行くためスワンナプン国際空港のロビー、免税店も回って店員に聞いてみると、今年はオフシーズンから落ち込んだままで、一向に回復しないとのこと。

2.国内建て直しの鍵は、鉄道路線の延伸など公共工事
サマック前首相から民間政府になって大規模公共投資が行われると期待をしたが、ソムチャイ新首相になっても、なかなか工事入札のスケジュールが進まない。原因となっているのは、ポチャマン・タクシン元首相夫人の裁判に見えるように入札の透明性を維持することに苦慮をしている。


3.国内消費は低迷
外国人観光客頼みができないとなれば、住宅、車など耐久消費財と衣食を中心とする日用品市場の動きをみれば国内消費の状態がわかる。
まず、住宅需要。現在まで完成した住宅はすでに建築着工段階で、売却済みというものが多いが、現在建設中のものは、新聞、TV、高架鉄道BTSの駅や車両で広告宣伝を必死になって行っていることから、まだまだ完売になっていない。
では、家をあきらめたから車かというと、そうでもない。乗用車の販売はそれほど落ち込みは無いが、商用車ピックアップは前年割れが数ヶ月も続き、12月の販売予測を見るまでも泣く、前年の販売を下回ると見られる。
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(2)タクシン前首相の影
いよいよ民力党の解散の予測は強くなってきた。このほどタクシン元首相のいとこであるチャイシット・チナワット元陸軍司令官が政界進出を表明。同時に、プアタイ党党首であったスチャート財務相は、党首を降りると宣言。
これで、民力党解散となった場合、プアタイ党が受け皿となる見込みである。
11月1日(土)に親タクシン勢力の、反独裁民主主義同盟(UDD)が国立競技場で開いた集会に、タクシン元首相は電話とビデオで参加。①クーデターにより不当な裁判にかけられ禁固刑で帰国できない、②自分は帰国して国民のため働きたい、③帰国の実現のためには国王の慈悲または国民の力が必要と発言。国王による恩赦措置を求めたことから、反タクシン派の民主主義民衆連合(PAD)は国民に国王次第という誤った理解を植え付けると非難。
いずれにしても、タイの政治を動かしている渦は、タクシン元首相にあることを印象付けた。

(3)日系企業にも雇用調整の動き
このほど米系自動車会社GMは国内販売不況から2009年1-2月は工場を閉鎖すると発表。
日系企業でも旭硝子は希望退職を募集、ニコンで業務契約先との契約を継続せず、順次業務委託先は従業員に法的な解雇金を支給して解雇をし始めた。もちろん、トヨタ自動車などは正規従業員の雇用は継続すると発言をしているが、業務委託先は契約期間終了とともに継続打ち切りを宣言。
タイ工業連盟FTIの調査では、Ayutayaにある200の大工場のうち、30がレイオフ、79の工場は退職者の補充をやめている。13の工場では、海外からの受注減により、作業シフトの減少(3交代を2交代に、2交代を1交代シフト)にして雇用の維持を図るようにしている。
他方、労働組合側は、使用者が国際経済危機を理由にレイオフを正当化しているに過ぎない、と反発。
Ayutaya地区の日系企業会のアンケートによると、年末ボーナスを昨年並みとする企業は8割近く多いものの、好調な企業1割は前年比プラス、不調な企業1割はマイナスと、景況感は分かれた。賃上げも、昨年並みとする企業は少なく、2009年の賃金改定は前年を下回る企業も増えてきた。
(2008.11.24)
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by tmobkk | 2008-11-25 02:14 | タイの動き | Comments(0)  

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