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アビシット政権、発足

TMOタイの動き 2008年12月

目次
1.アビシット政権、発足
2.政治の混迷から抜け出せるか
3.世界同時不況とタイ
4.日系企業にも雇用調整の動き

(1)アピシット政権発足 
サマック前首相、ソムチャイ前首相などタクシン派政権に反対する民主主義のための民衆連合(PAD)の数ヶ月に及ぶ首相府への座り込みがようやく終わった。最後はPADが11月26日から12月2日までのスワンナプーン空港、ドンムアン空港の閉鎖というタイ国の信用を失墜するような行動もあった。締めくくったのは憲法裁判所である。ソムチャイ首相をはじめ、人力党など与党の解党と政党幹部5年間の政治活動禁止という憲法裁の判決を受けて、2代続いたタクシン派内閣は崩壊した。その後、従来の与党の一部が民主党への寝返りしたこともあって、アビシット・ウチャチーワ民主党党首が12月15日の国会で首相指名を受け、17日の国王認証式に臨んで正式な首相に任命された。
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(2)政治の混迷から抜け出せるか 
アビシット新首相は 12月29日に国会で所信表明をすることになっているが、反政府運動の反独裁民主主義国民同盟(UDD)の国会前の座り込みなど従来のPADと同じ戦術をとって民主党主導の国会運営を阻止しようとする動きがある。
 数ヶ月からタイ国内では黄色か赤か、どちらか聞かれることがあった。黄色=PAD、赤=UDDで国民は大きく2つに割れる。
 当初、PAD設立者の一人であった方も、チャムロン将軍が率いる実力行使には賛同できず、離れていった指導者もある。
 2009年1月には、30あまりの失脚した国会議員の補欠選挙、バンコクでは汚職容疑で辞職したバンコク都アピラック知事の後任を選らぶ選挙が行われる。UDDの集会にはタクシン元首相の電話メッセージもあってタイの政治を動かしているひとつは、タクシン元首相にある。

(3)世界同時不況とタイ
1.タイ経済は、貿易と観光によるところが大きく、国内消費が経済の占める割合が低い。国際空港閉鎖を受けて、今までのタイへのイメージを落としたことによる観光客のキャンセルに加えて、電子部品など空輸に頼っていた物流は大きな影響を受けた。
これに輪をかけているのが、政治不安である。ASEAN議長国であるタイは首脳会議を2009年2月にチェンマイにて会議を開催することをソムチャイ内閣時代に決めたが、民主党政権になって1月末、バンコクにて開催で関係国と調整を開始した。
2.国内建て直しは、雇用の確保と大規模インフラ開発か
経済界からアビシット新政権に対して次のような要望が出されている。
1)政治対立の解消
2)補正予算の編成と予算執行の加速化
3)投資家の信頼感回復
4)観光業支援と国のイメージ回復
5)SEM、輸出業者の資金繰り支援
6)輸出市場の開拓促進
7)雇用対策
8)不動産市場の刺激
9)法人所得税、付加価値税の減税
10)政策金利のさらなる引き下げ
11)バーツ相場の安定

いずれも今後の政権がどのような施策を打ち出すか、注目をしていきたい。
気になるのは、アビシット首相が「政治の対立が解消できなければ、自分は首相をおりる」との発言を行っていることである。日本の安部元首相のように腰砕けにならなければ良いのだが、粘り腰のないのが気にかかる。

(4)日系企業にも雇用調整の動き 
タイの東部、東部臨海地区の工業団地(自動車部品が多い)とアユタヤ地区の工業団地(ITおよび自動車部品)の工業団地を11月から巡回して、日系企業の現状をヒアリングしている。
アユタヤ地区の日系企業を取材すると、年末ボーナスを昨年並み支給する企業は8割近く多いものの、不況企業は業務委託先の契約満了による更新なし、正規労働者でも指名解雇、残業禁止など雇用調整の動きが始まっている。
(2008.12.29)

by tmobkk | 2008-12-29 18:48 | タイの動き | Comments(0)  

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